地球温暖化の要因でもある畜産
『WORLD WATCH』2009年12月号に「地球温暖化で見逃されている一大要因 畜産」という、かなりショッキングな特集記事があった。それによると、国連食糧農業機関(FAO)は、人為的メタン排出のうち37%は家畜に起因すると見ている。FAOは、消化器(反すう類の胃)のメタン発酵や糞尿管理によって、2004年には1億300万トン、CO2換算値23億6900万トンのメタンが家畜から排出されていると算出しているという。
家畜、特に酪農(牛)から排出される一日に100~200リットルと言われるゲップ(メタンガス)はCO2の21倍の強力な温暖化効果があるだけに深刻なのだという。
牛、豚、鶏を飼育するために、人間の4~10倍の餌が必要で肉1kgを生産するには、エサとなる飼料用穀物が、牛肉で11kg、豚肉では7kg、鶏肉では3kg必要なのです。
また、消費する水の量も、1kgの小麦のために必要な水の200倍以上の水が、1kgの牛肉を生産するために必要なのです。2009年、飢餓人口は10億人を超え、人類の6人に1人は十分な食糧を得ることができない状況の中、豊かになった新興国の中間層の肉需要は増えるばかりです。
せっかく作られた穀物が飢えた人に渡らず、その半分以上が家畜の餌となっています。
森林破壊、環境破壊 … どうすればいいの?
穀物の大量消費、水の大量消費の他、低い生産性、森林破壊、環境破壊、動物体内の抗生物質などの問題も指摘されています。同じ広さの土地からの収穫量は、肉の重量の、豆はその10倍、芋は肉の160倍もの収穫が可能です。
現在、世界的に草地が不足しているため、家畜を飼育する場所を確保するため、自然の森林がつぶされています。畳2枚分の森林がたった牛肉100gのために破壊されます。
放牧地1ヘクタールで飼養できるのは、せいぜい牛1頭です。そのため工場式畜産の場合、畜舎の空調のために多くの電力が使われます。鶏などは生産量をあげるために、電気をつけっぱなしにしたりもします。
また、家畜の糞尿による土壌汚染なども問題となっています。従来、家畜の糞尿は、堆肥生産に3~4ヶ月間空気曝露し、メタンなどの温室効果ガスを排出します。
畜産品から代替品への「メニュー革命」が地球を救う
畜産関連の温室効果ガス排出量は現在でも危険な水準ですが、畜産代替品(大豆ミートや大豆や米でできたミルク、チーズ、アイスクリームなどの畜産類似食品)の生産による温室効果ガス排出量は、畜産品に比べごくわずかです。
また、畜産代替品は、気候変動を緩和するだけでなく、現在進行している世界の食料危機および水危機の回避にも貢献できます。
なぜなら畜産品と比べてその類似食品は、同量のカロリーで見ると、生産する作物量がはるかに少なくてすみ、畜産類似食品は、畜産に必要な大量の水も、他用途に転用できるようになります。
大豆バーガー、大豆チキン、大豆アイスクリームなど畜産類似食品は、「切る、焼く、ソースやスパイスを加える」などの加工をすると、ほとんど肉や乳製品と区別がつきません。
日本でもマクロビオティックなどに利用されていますが、味は同じで、従来の畜産品よりも調理しやすく、安価で健康にも良い代替品。食品会社が、畜産代替品をもっと生産・市販するようになれば、私たちも畜産品を食べる量を減らすことができると思います。
また、畜産では家畜を早く太らせるためや病気治療や予防のために抗生物質などが投与されています。抗生物質が環境および食品に蓄積すると抗生物質耐性が高まり、 世界保健機関(WHO)は畜産業界の薬物乱用が深刻な健康被害をもたらすと懸念しています。
消費者の健康や栄養面でも、畜産物より代替品は優れています。