LOHASブログ

 美しい環境と豊かな生活の実現に向け、形で表す通訳、
 それが環境デザインです。

環境デザイナー/東京大学 講師 今井澄子さん

IBMニューヨーク本社をはじめ、サンフランシスコ日本総領事公邸、ビバリーヒルズのブティック・フェンディ、東京ドームシティを手がけるなど、華やかなキャリアと才能の持ち主。グローバルな活躍をされている今井さんが考えるLOHASとは…

環境デザインとは、そもそもどういうものなのですか?

「『虫の目』で身の回りをみていく。『鳥の目』で全体図を把握する。その『距離軸』と過去・現在・10年後・何百年先の『時間軸』を考えていく。これが私の環境デザインを考えていく基本です。美しい環境と豊かな生活を実現していくことを形で表す通訳、それを環境デザインと考えています」

ホテル、オフィス、商店、住宅など、対象となるものによって違いはあると思いますが、今井さんが環境デザインを行う際に優先的に考える要素とは何ですか?

「クライアントがどうしたいのかという目的を、的確に伝えること、機能的であり、その場に集う人や働く人たちが楽しめるものを創ることを第一に考えます。そしてメンテナンスも大切な要素ですね。メンテナンスとは、清掃することではなくて、いかに使いこなしていくかということです。
時間と費用を費やした大作も、利用者が使いこなすことができなければ何の意味もありませんから。建てる側も、利用する側も、みんなが愛情を持って大事に使いこなしていけるものを創ることが、環境デザインをするうえで大切だと思っています」

あの家具デザインで有名なチャールズ・イームズ社に入りスタッフとして働きましたね。凄いというより羨ましい経験ですね。

「イームズのことも良く分からず(アートセンターオブカレッジ)校長先生のドン・キュブリーさんに推薦を受けました。イームズで学んだことは正に今でいう『LOHAS』の極意だったように思います。

イームズから、古いとか新しいとかでなく、本物が一番という価値観を学びました。またイームズをはじめスタッフもプロの意識が非常に高くそのため他のプロに任せたら、その領域には決して入ってこないという人たちでした。しかしそれは一番厳しいということでその分責任もありエネルギーをつぎ込まざるを得ませんでした。

私はここで、最初の仕事はニューヨークのIBM本社のオフィスを手がけました。イームズは建築家としても一流ですが見には来るけど何も言いませんでした。

結局、IBM. NYはイームズの代表作になりましたが本当のプロのプロデューサーの姿を見たような気がします。」
イームズの代表的チェアー。5つのキーワードは
今でも大切にしている今井澄子デザインの基本

環境に配慮したライフスタイルは、LOHASの基本カテゴリーのひとつです。環境デザインはロハス的だと思うのですが、今井さんが考えるLOHASとはどういうものですか?


「『LOHASとは○○です』と言い切ることは難しくて、身の回りのことやちょっとした行動を積み重ねてきた結果が実はLOHASだった、という感じではないかしら。だからLOHASとは何気ないもので、そんなに大袈裟なことではないと思いますね。物質的なことや現象そのものではなくて、心の豊かさや、安心さのようなものではないでしょうか。

ここでちょっといいお話をご紹介しますね。チャールズ・イームズの事務所で働いていたときの夫人のレイのことをお話しします。
レイは、毎日のように花を摘んできては、仕事場の私たちにおはようといって一輪くださるのが日課でした。それを知ったご近所の人たちは、レイが通りがかりにいつでも花が摘めるようにと、家の塀の外にも花を植えたのです。

やがて夫人が事務所へと通う道は、四季を通じて美しい花々が咲き誇るようになりました。
サンフランシスコ総領事館のインテリア、家具をデザイン 


IBM ニューヨーク本社 1977年


フェンディ/ビバリーヒルズ店 1983年


廃棄物の島として有名な四国の豊島・直島の廃棄物処理プロジェクト、工場、トラック、船舶の環境デザイン


九州の佐賀市役所、メインホール。役所のイメージを払拭する曲線を多用し、やわらかで格調のある空間を創造


タイヤのリサイクルゴムを使った車止め。夜も視認ができる発光フィルムをデザインし、レイアウト


これがLOHASな心遣いですよね。他人への思いやりや、自然はみんなのものであるという意識があったからこそ生まれたステキなエピソードだと思います。また、私たちのために毎日花を摘んできてくれたレイの心遣いもすばらしいですよね。人をもてなしたり、楽しませることは難しいことではないんです。思いを形にすることは、ちょっと意識さえすれば誰でもできることなんですね。これはLOHASにも共通していえることではないでしょうか」

  都電、荒川線を子供たちの絵でラッピング、都営のラッピングバスも今井作品

では、自分たちの住まいや、身の回りの環境にロハス的要素を取り入れたい場合には、どのような努力をしたらいいのでしょうか?

「本当の自分の『心の目』で見て感じることかしら。背伸びしたり、世の中の肩書きや見栄を張ることなくホンモノをたくさん見て、自分のサイズで選んでいく、要するに整理整頓。物も心も含め優先順位を考えることが実生活にLOHAS的要素を入れることかしら」

日比谷駅プロムナード、量壁面、円柱、パブリックファニチャー、キオスク等をトータルデザイン


最近のお仕事について少し話して下さい。

「岐阜県の長良川プロムナードとして長良古津橋線沿いの環境デザインを行いました。
堤防は水防のためのものですが、子どもたちの絵をコラボレートしました。春夏秋冬の四季をデザインし、距離のサインになればと考えました。
きれいになったことで、みんながゴミを捨てない落書きもしない場所になりました。」
長良川プロムナード

デザインは、時として人を変えます。

ぎふ「花フェスタ記念公園」のサイン計画は、はっきりした色でわかりやすいフォルムをとりいれデザインしました。サインも目立つこと、調和することをテーマにしました。

計画当初は、関係者からも原色でケバケバしいと採用には難色を示しましたが、ワガママをいって実現させました。結果は、サインの使命であるわかりやすさがとても好評でした。
タバコ灰皿とタイヤのリサイクルのスツール

今後はどのようなお仕事を積極的にしていく予定ですか? また、21世紀をむかえた今、環境デザイナーとしての使命(役割)をどのように考えていますか?


「今までは大人と向かい合っていたので、これからは仕事を通じて積極的に子供たちと接していきたいですね。最近の日本はいろいろな事件があって、子供は大人を警戒しているし、安心して遊べる場所も少ない。だから、経験が豊かで高い志を持つ大人たちが、一生懸命子供たちとコミュニケーションすることが必要になってくると強く感じています。
子供時代の心が真っさらな状態のときに、親以外の大人たちが、人生にはいろいろな選択肢があることや、上質な知識をインプットしてあげること、何かに悩んだり迷ったときに背中をポンと押してあげることが大切だと思うんですよね。
そして、環境デザインというツールを上手く利用して、地球に住む人間同士が国境を越えて互いの存在を認め合い、思いやりがもてる関係を築いていくためのサポートをすることが、環境デザイナーとして21世紀での重要な役割になると思っています

日本人はひとつのものを作るのはとてもシャープに美しく仕上げます。「個」として作りあげていてひとつ一つ足し算していく。材料や色、モジュールなど全体を考えず統一感がなくなってしまうんですね。主語がいつも「I」なんですね。街やモノを作るときにまず鳥の目で全体を上から見てそれから虫の目で細部を見る。周辺の環境を何も考えずにそこだけ立派に作っても不自然で立派に見えません。「We」で考えることが大切ですね。

20世紀は経済と産業の時代でしたが21世紀は心と自然が調和する環境づくりの時代ですから・・・。」












 今井澄子 Profile

学習院女子短大卒業後、米国に渡る。アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン環境デザイン科卒業、UCLA大学院ファインアート科卒業(修士号取得)。近代的な椅子のデザインで有名な米国人デザイナー、チャールズ&レイ・イームズの事務所に勤務。才能を開花させ、サンフランシスコ日本総領事公邸、IBM本社のインテリアなどで高い評価を得る。92年、東京に『今井澄子デザイン事務所』を設立。現在は拠点を日本に移し、幅広く活躍中。




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