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 持続可能な農業への挑戦
 
 

養豚農家…並木俊幸さん / 有機農家…斉藤完一さん  

日本の食と農は危機的な状況と言われる。低い食料自給率、高齢化、担い
手不足、日本の農業は再生するのか? そんな中、資源なき国の弱さを強
さに変える新しい試みが行われている。
千葉県で養豚農家を経営している並木俊幸さんは家畜ふん尿がお宝になる
という逆転の発想に着目。一方、20年間有機野菜をつくっている斉藤完一
さんは…

並木俊幸さん 斉藤完一さん
 
 
持続可能な農業の救世主
バー
 
 

農業の効率化を求めるあまり化学肥料や農薬に頼る農業、輸入飼料に頼り
排出される畜産ふん尿と格闘する畜産経営。牛で40kg、豚3kg、鶏100g、
これはそれぞれ1頭(羽)が1日で食べる飼料の量であり排出される糞尿
の量でもあります。家畜排泄物は畜産農家と耕種農家の連携で有機堆肥
として有効に活用されるものでした


家畜排泄物が地下水や河川の汚染、悪臭、温室効果ガスの排出、 病害虫の
発生などを引き起こし、環境問題となって久しい。家畜のふん尿処理は、
完熟堆肥となるには4
ヶ月程度要し、時間と手間がかかり生産者にとって
大きなマイナスコストとなっているのです。

豚舎
千葉県で養豚農家を経営している並木俊幸さんは家畜ふん尿がお宝になる
という逆転の発想に着目し、実用化に向けた試験段階で導入。2009年6月
「農商工等連携事業」にも認定されました。  

一方、20年間有機農法で野菜をつくっている斉藤完一さん。並木さんの生
産した有機肥料を使ってみて、ハエのチカラによる効果に期待している。
その取り組みは、NHKワールドの『NATURE'S WONDER WORKERS
でもご紹介されたようです。山積する問題をハエのチカラで解決する
「持続可能な農業」とは…

畑
 
 
逆転の発想に着目
バー
 
 
5年前、千葉県山武市に養豚農家として独立した並木さんは、母豚にするための豚を約1000頭飼育している。日量3トンにも
なるというその排泄物、一般的な処理方法は、プールのようなコンクリートの堆肥舎にふん尿を溜め、適宜機械で撹拌させな
がら微生物の作用で4〜5ヶ月かけて堆肥化する。
豚舎
並木さんが育てている豚は広いスペースでのびのびと育つ

それだけの期間がかかれば広いスペースが必要となり、切り返すための
膨大な労力、並木さんにとって養豚経営の大きな足かせとなていました。

そんなある日ハエの幼虫が家畜ふん尿をわずか1週間で処理する「ズー
コンポスト」の話を聞き、当時は実用化に向けた試験段階であったにも
かかわらず導入を即断した並木さんは「堆肥舎でウジ虫が湧いたところ
だけふん尿がサラサラになるのを見ていましたから、これならいけると
いう確信がありました」と振り返ります。問題を解決するための、並木
さんの選択がハエの幼虫だったのです。

実はそのシステムは、宇宙船内の排泄物処理と宇宙飛行士用食料への転
換という発想から研究開発された技術で特殊なイエバエを使って家畜の
ふん尿を再資源化するシステムです。並木さんによれば、イエバエ幼虫
の効用は単にふん尿処理の省スペース化、スピードアップだけでなく、
従来の方法に比べ、悪臭や二酸化炭素、その20倍もの温室効果があると
いうメタンなどの発生が著しく減少し、環境にやさしい養豚が可能にな
るという。

並木ファーム
ズーコンポストを導入した「なみきバイオマスファーム」

 
 
5つのベネフィットが…
バー
 
 
害虫と思われているハエは、実は人間社会に多大なる貢献をする可能性が
高いというのです。ハエを利用したそのズーコンポストでは、次の5つの
利益をもたらすそうです。1.迅速で簡単、2.環境にやさしい、3.有益、
4.健康な作物の生産、5.飼料を生産。

今まで悩みの種であった蓄ふんから、有機肥料のみならず飼料まで生産で
きるというそのズーコンポストシステム。
「まず家畜のふん尿にイエバエの卵を振りかけ、卵からふ化した幼虫が最
も活動しやすい室温25度に保ちます。4日目には処理を終えた幼虫が自然
に出てきます」と並木さん。

【迅速で簡単】
蓄ふんをトレイに敷き込み、イエバエの卵を接種。イエバエ幼虫の消化酵
素により7日間で蓄ふんを分解し、処理が終わると幼虫が這いだし、手を
かけることなく堆肥と分別されます。

【環境にやさしい】
ズーコンポストは、地球温暖化の原因となるCO2やメタンの排出量が驚異
的に低減します。

【有益】
昆虫の酵素による変換機能を活用して生産されるので、天然のキトサンが
含まれる有機質肥料になり、一般的な堆肥と比べ性能が安定し高価格で販
売できます。

【 健康な作物の生産】
ズーコンポストで生産された肥料は、虫の持つキトサンが土壌を活性化さ
せ植物を病気から守り、殺虫剤や農薬の使用が少ない農産物の収穫が期待
できます。

【 飼料を生産】
イエバエの幼虫は、養鶏や養殖魚、観賞魚などの飼料となります。
コンポスト内
家畜ふん尿にイエバエの卵を振りかけコンポスト内へ 
コンポスト内部イエバエの卵を振りかけた豚ふんをコンポスト内に入れる
と6日目には幼虫になって下の容器に落下。このコンポ ス
トが1つが1日分3トンを処理

コンポスト
5日目頃から臭いはなくなるがコンポストの排気口から
ヒバチップの中を通って排気される
 
 
ハエのチカラで問題を克服
バー
 
 
地球上に生息する動植物の70%は昆虫です。昆虫がこのように繁栄している秘密は昆虫が持っている優れた自己防衛能があり
ます。昆虫であるハエは、いろいろな動物の死体や糞を分解する世の中になくてはならない昆虫で、このズーコンポストでは
そのハエが環境にやさしい驚異の働きをしてくれるのです。  

家畜の飼料には感染症などの病気を防ぐために抗生物質が使用されますが、抗生物質は耐性菌が出来るため、より強い抗生剤
が必要になるといいます。抗生物質に代わる薬の第一候補が抗菌ペプチドであり、イエバエの幼虫は高タンパクでアミノ酸の
種類も多く、幼虫を乾燥し飼料にすれば、キチン・キトサンが豊富に含まれた機能性飼料ができるという。


肥料
イエバエの幼虫が処理しサラサラになった蓄ふんは乾燥機で、
さらに乾燥させ有機肥料となる
飼料になる
幼虫は、その体を作るタンパク質が抗菌性が高いことから、
鶏や魚の良質の飼料となる
 
 

「従来の堆肥と異なり、イエバエ幼虫の消化酵素で分解した堆肥は完熟度
が高く、しかも抗菌性にすぐれているので良質な有機肥料になるのです」
と並木さん。さらに、ふん尿と一緒に分解される粉砕したもみ殻やその
燻炭を豚舎の床に使うなど、商品としてよりよい堆肥にするための工夫
もかさねています。  

2009年11月、NHK国際放送のズーコンポスト紹介番組で並木さんとその
ズーコンポストで生産された肥料を使って有機栽培をしている斉藤完一
さんが世界各国に紹介されました。  

有機農業界ではその名を知らぬ人はいないほど、野菜の味に定評があり、
有機農業歴20年以上の斉藤完一さん。「有機栽培で一番大事なのは土づく
りで、科学的なものは一切使わず、その基本が良い堆肥作りで微生物を
大切にすること」という斉藤さんの畑自慢は、畑に棒を刺すと1メートル
以上スルスル入るというのです。  

ズーコンポストで生産された肥料は、虫の持つキトサンが土壌を活性化さ
せ植物を病気から守り、好ましい収穫ができ、病気の発生も減少している
という。
並木さん
斉藤さん
NHKワールドで紹介された並木さん(上)と斉藤さん(下)
TV番組で紹介された斉藤さん
 
 
環境にやさしい循環型農業を
バー
 
 
有機農法こだわり続けて20年、斉藤さんの基本理念は、「楽しい農業」
「次世代に継承する農業」「食べる人のことを考えた農業生産」「環境に
やさしい循環型農業」。なかでも新しい担い手をどう育てていくかが日本
の農業の再生の決めてとなると考えている。


現在の農家はどのように指導してもあと4〜5年でそれ以降は農業を続けら
れない農家が多い。そしてその後の農地の活用を依頼される事が少なくな
いという。斉藤さんは現在の耕作放棄地や今後出てくる農地に若い就農者
を指導し独立させる試みを行っている。彼らに有機的な農法を指導し、消
費者に信頼される農産物を提供していけば、農業は変わって来るはずと言
う。現在10人以上の若い就農者の面倒を見ながら相談にのっている。

斉藤さん
TV番組で紹介された斉藤さん
国立ファーム
国立ファーム「野菜の台所」のポスター
「本来の自然の力で育った野菜でつなぐ、生産者、販売者、消費者の信頼関係。私は
安心、安全な野菜を育てる有機農法に自信と誇りをもって取り組んでいます。農業に
は土作りが一番大切であり、近代農法は窒素、リン酸、カリを含む化学肥料中心の栽
培ですが、そうでなくても野菜は育ちます。
今の農業は環境や土の大切さよりも、生産性や効率化の方が重視されています。スー
パーなどで売られている野菜は見栄えもよく、サイズも一定です。しかし、その裏で
どのような生産が行われているか、消費者の皆様は知らずに口にしています。私は生
産者、販売者、消費者の思いが一体になって安心、安全という信頼関係を築き上げる
ことが大事だと考えております。そのため、日々試行錯誤を重ね、自然の力に即した
栽培方法を模索しています。本来持っている力を取り戻せば自然界はうまく循環しま
す。そして自然によって人間が癒され、解放されること、それを一人でも多くの人に
伝えたいと思います」という斉藤さんは、同じ考え方を持った仲間と生産者のネット
ワークをつくり自分の畑で作ったものを自分の手で販売していこうと考えているそう
です。
 
 
取材後記
取材で感じたことは、農業も畜産業にしても最終の選択権や判断は消費者にあるということだろう。わが国の消費者が農業
の衰退を招いた大きな要因であった可能性は大かもしれない。 消費者の食の安全性についての関心が高いと言われるが、
現実にはほど遠い。アンケートや調査では「価格より安全」という消費者のデータが多いが、現実は違っているのだろう。
日本の有機農産物の農産物全体に占める割合が0.17%という数字が示している。
農産物の安全に関する情報が氾濫する一方で正しい知識が伝わっていない。農業には農業生産者だけでなく消費者の理解と
応援がそして「正しい賢い消費」が必要なのだろう。

記事でご紹介した有機肥料『ビオス』はこちら

 
 
 並木俊幸さん Profile
 
  1961年千葉県生まれ。県立多古高校農業科畜産部卒業後マリンレジャー事業経営。
2006年、耕畜連携循環型農業を目指し並木農場起業、現在に至る。
 
 
 斉藤完一さん Profile
 
  1951年千葉県生まれ。1987年、大地を守る会に30アールで有機農業始める。
1989年、自然派ネットワークに入りすべての耕作面積で有機栽培を本格的に始めた。
1993年、(株)生産者連合デコポン設立。
 
 
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