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 養豚獣医師が感じた日本の農業
 
 

コーチング獣医/ 福井利恵さん

子供のころから動物が大好きで、犬・猫・近所にあった牧場では馬とよくコミュニケーションをしてきたという福井利恵さん。小学5年生の時、自らの判断で飼い犬の安楽死を選択する機会を1年間に2度も体験。その時に、命の尊さを扱うことの重要さに気づき、獣医師になることを決意。

福井利恵さん

 
 
獣医師となってから育児をしながら、社会復帰の第一歩として始めた千葉県の臨時職員時代。仕事で訪れた養豚の現場を見て、農場主が信頼できるパートナーがいないために、薬品ディーラーや飼料会社の方などからの情報に翻弄されているのを見て、パートナーとしての獣医師の必要性と不足に気づき、養豚獣医師となる決断をしたという福井さん。

その後、福井さんは養豚場で1年間研修し、養豚の仕事の素晴らしさと日本農業に於ける養豚業のきびしい実情に驚きました。家畜飼料の殆どを輸入に頼り穀物の国際市況に経営が左右される現実、エネルギー費用の高騰による経営の不安定、安い輸入豚肉に直接影響を受ける国産豚肉の出荷価格など日本に於ける農業の縮図を見てきました。また高齢化と若年労働者の不足は養豚農家を直撃して中小養豚農家は廃業や身売りを余儀なくされている現実。食のグローバル化は否応なく農家を直撃していますが、生き残りをかけた養豚農家の奮闘を見て、獣医として使命感を感じているそうです。
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食とは命をいただくこと
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動物の豚=食卓で食べる豚肉、と結びつく方、どのくらいいらっしゃいますか。私たちの食べるものは水と塩を除き殆どすべて他の生命体の命をいただくことで成り立っています。食品としての豚肉が昔も現代も日本人の体質や嗜好に合い、その豚肉を食卓に供し創りだすことに仕事のやりがいを学びます。同時に、養豚場内でのコミュニケーションがうまくいっているかどうかが、私たちが食する「命」というものの大切さが社会全体に浸透するかどうかを決定する要因であることに気付いたそうです。

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アメリカでも食肉用動物の飼育環境を高め、食肉用の動物をHumane (Humanに由来するヒューメイン)に扱う運動が、アメリカのロハスなスーパー「ホールフーズマーケット」で始められており消費者にも受け容れられている。これらの食品には「Animal compassion」のラベルが貼られ区別されています。
そして現在は、Humane食品がテーブルに並ぶことが人間社会にいかに大切か、という視点から農場HACCPを学び広め始めた福井さん。現在は養豚HACCPの農場向け指導、講演、勉強会の開催、コーディネーター獣医師の指導を手掛けています。
HACCP(ハサップ)とは、安全な食品生産の国際基準です。現在、予防的な方法を用いて、安全な食品を作る方法として、食品業界に広く用いられています。

「先日、豚の採血に行ってきました。豚さんの鼻を保定器でぎゅーっとつまんで、おとなしくなっているところへ頚静脈から採血します。うーん、出来るだけストレスをかけないようにスピーディーに、かつ的確に。豚のオーエスキー病というのを撲滅する事業の中での検査のために採血をするのですが、何をするのにも段取りと、何か起こった時も素早く対応する必要があります。特に、肥育舎では豚さんがいっぱいいるので採血に夢中になっていると他の豚がどどーん!と突進してきたりもします」と、楽しそうに話す福井さん。

 
 
日本の獣医大学にもコミュニケーション教育を
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また、農場で機能するコミュニケーションを広めたいという想いから福井さんは、2006年よりコーチングの第一人者である岸英光氏に師事、コーチングを学びます。
その中で、機能するコミュニケーションが農場だけでなく、家庭に、教育現場に、職場に、地域社会に、政治に、日本に、世界に。いかに必要かということに気づきます。2008年、機能するコミュニケーションを日本に広めるため、獣医分野のコーチとして独立しました。
2008年、カナダで開催された世界の獣医コミュニケーション会議に参加しました。参加されたのは、各国MBAをはじめ、コーチや教育者、獣医師、動物看護士など様々でしたが、欧米やカナダでは意識が高く、その中で日本のコミュニケーション教育が約10年の遅れを取っていることを知ります。そして、世界で出来たパートナーの協力を得ながら、獣医大学にもコミュニケーション教育の重要性を伝え、実践しています。
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世界の獣医コミュニケーション会議で 
 
 

野生の環境から人間の世界に連れてきてしまった、馬との関係の構築

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4 福井さんは、2010年の千葉国体での仕事をされるそうで、2009年より、馬の診療の活動を始めています。
馬と人間は欧米社会や日本でも古くから特別な関係にあり家族の一員として育てられてきた歴史があります。馬と人間は特別な関係でコミュニケーションの深い部分を見たり、人がなぜ馬に会いにくるのか、人と馬の関係を勉強しています。養豚や犬猫を仕事としてきた福井さんは、馬に会いに来る方から教わることは新しい発見が大きく、馬とのパートナーシップはそのまま犬猫にも言えることが多いのでは、と思っているそうです。
また、「乗馬は大変メンタルなスポーツで、自分の心の状態がそのまま馬の動きに現れるので、そういった意味でも、自分自身の観察をするし、人とのコミュニケーションにも活かせるスポーツ」と話します。
 
 
痛みの感覚のちがい
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動物と人の痛みの感覚についてですが、福井さんによれば「動物は人間に比べて痛みの感じ方が少ないように見えます。オペをした後でも、痛み止めを別途処方しなくても家に帰れたりします。そして犬の場合、痛そうな素振りをすることも少ないです。もちろん、痛みがないわけではありませんし、痛そうにしていることもありますが・・・。
特に犬猫でなく牛や豚の場合は、痛みをあまり感じていなくて、平気でいる様子だったりします。もちろん痛いんですよ。これに比べて、人間はどうでしょう。
手術の後など、痛み止めがないとやってられないですよね。人は、痛みを増幅する機能があるみたいです。痛みの感覚は、動物と人で、どうも違うようです。特に被食動物は、痛いからといって大声で鳴いては、敵につかまってしまう、というのがカギのようです。
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特に思うのが、馬の脚。いつも擦り傷だらけだったりする馬もいますが、そんなに痛くなさそう。その点、恐怖に関しては、動物は忘れられないようです。ちなみにうちの犬は、犬小屋に入って怖い思いをしたのか、絶対に入らなくなりました。人は、上手く忘れたり、恐怖を感じなくする機能があり、それにプラスして人は言葉で痛みや恐怖を表現することで、それを処理できるのです。ほんと、言葉ってすごい。ですから、動物を扱う時に留意することは、人の感覚だけでからではなく、特に『恐怖』を与えないこと」だという。

 
 
変わりゆく幸福のかたち
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最近、結婚をしない方や、離婚をする方が増えています。福井さんは、自身の体験を積極的に話し周囲の相談にのっています。それぞれ事情は違いますが、「自分自身を大切に生きたい」という社会的概念が生まれていることの表れと感じているそうです。
6 「パートナーシップとは、お互いが自分自身を持ち出し、機能するように協力しあうもので、相手を思い通りに支配したり、どちらかがどちらかの人生を止めたり、苦しめるためのものではありません。昔は、耐え偲ぶ。という考えがありましたが、最近の傾向からして、自分自身の自立、まずは人に頼らないところから始める時期ではないか、という意見を持っています。自立が成立した上で、時代とともに、結婚の形は更に新しく変化していくと思います」
「戦後は、『物』を生産することで、達成感や幸福が得られたのですが、現代の社会は物や情報があふれ、昔と同じやり方では人生の幸福が得られません。現代求められているのは、過去に創られた価値観に依存するのではなく、本来の自分自身への自立した状態で、本当にやりたいことをやることが、人生なのでしょう。一人ひとりがそれを実践することで、機能するコミュニケーションが日本に充満し、政治、経済なども含め機能する状態になるでしょう。一人ひとりの自立、そして自分自身の本来のやりたいことに基づいた行動。そのために、私の獣医師という立場からのコーチングが良いきっかけになれば、と『コーチング獣医』のネーミングをし、活動を始めました」と話す福井さん。
 
 
コミュニケーションが世界を創る
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  「結局、世界を創っているのは、人の価値観とコミュニケーションだと思います。世界をより良くするために自分の固執した価値観という枠が邪魔をしているならば、それをいったん手放して、本来の自分自身でコミュニケーションを人と、職場と、社会と取っていくと、必然的に変化するチャンスが訪れます。特に獣医師や動物看護士、畜産業は私たちが日頃から生きるのに提供されている「命」を扱う職業で、命の尊さ、そして命あること、命あるものへの感謝を強く感じることが出来る職業だと思います。ですから、動物に携わる私たちは社会へそのことを伝える意図で関わることで、社会に命への感謝が伝搬していきます。動物病院でのコミュニケーションや、畜産農場での動物との関わり方、関係者との会話ひとつから、動物を通した人と人とのコミュニケーションは社会変革へ大きな可能性を秘めています」と福井さんはいう。

機能するコミュニケーションを使って、命を大切にする社会を実現する。その視点から福井さんの活動は一例を挙げても、獣医師へ向けたコーチング・コミュニケーショントレーニング、人と動物の共生に関わるプロジェクト・企業への支援・コーチ、大学への特別講義や小学校への命の授業、安心・安全な畜産物を食卓へ「農場HACCP」指導・講演など様々です。
「私たち人間は、動物、植物を問わず、『命』をいただいて命を保っています。つまり、すべての命はつながっていて、地球全体を健康にするには、私たち一人ひとりが健康であり、周りの命に感謝し、健康に保つことが大切なのです。私たちが地球環境とより良く共生していくには、そのことに一人ひとりが気づく必要があると思います」

 
 
 福井利恵 Profile
 
  1974年千葉県千葉市生まれ。自然に恵まれた山里で少女時代を過ごす。小学5年生の時、自らの判断で飼い犬の安楽死を選択する機会を1年間に2度も体験。その時に、命の尊さを扱うことの重要さに気づき、獣医師になることを決意。
日本獣医生命科学大学出身。就職した動物病院を結婚を機に退職。家畜保健衛生所に勤務し、養豚の現場で、産業獣医師の必要性に気づき、養豚獣医師となる。2005年、なのはなベテリナリーサービスを開業し代表となる。
 
 
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