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L.C. News & Report
  ニューヨーク支局からは、
トレンド情報誌の先がけとなった「PRONTO」や「USフードジャーナル」の編集長を務め、現在は健康食品ビジネスコンサルタント会社を運営し、英文の日本の健康食品市場レポートを発刊しているポール山口がレポートします

スペース
ニューヨーク支局  
Paul Yamaguchi

 
 アートとエデュケーションとアグリカルチャー、ロハスが息づくキャッツキル
 
 
キャッツキル
 
 

キャッツキルは自然保護地

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キャツキルパーク(Catskill Park) はNYのマンハッタンから200キロ程北上したハドソン河の西に広がる広大な自然保護地区。その広さは約3万平方キロメートルで標高1000メートルを超える山々が連なるキャッツキル山脈が美しくそびえる。(東京郊外、秩父や奥多摩に似ている環境かも知れない)夏には山間を流れる川でフライフィッシングや川下りを楽しむ人が訪れる。
キャッツキルは東海岸でも有数な鱒の釣り場としても知られている。沢から流れ落ちる滝は各所で見られその美しさは一瞬息を呑む。指定キャンプ場も各所にあり、設備も整い快適なキャンプを楽しめる。また冬はNY周辺でも有数なスキー場も数あり、特にハンターマウンテン(Hunter Mountains) やウインダム(Windham) はニューヨーカーにとって日帰りが可能なスキー場として親しまれている。1969年のロックコンサートで知られるウッドストックもこのキャッツキルの中にある町だ
ケーブルカー
1890年には山頂のホテルに客を運ぶ
ケーブルカーも建設された
 
 
保護されたNY市の水道源
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また、このキャッツキルパークの中には人口1千万人のNY市、およびその周辺の水道を賄う貯水池がある。その水は 地下に施設された巨大なアクアダクト(Aqueduct)の中を高低差だけでポンプを使わずに NY郊外まで150キロの道のりを流れていく。その貯水池の水源となる広大な地域はウオーターシェッド(Watershed) 地域に指定され、NY市が汚染を防ぐために厳しい規制を施し、きれいな水源を確保している。この厳しい規制がきれいな水と自然環境を200年ものあいだ、変わらずに保っている。

 
 
避暑地としてのなごり
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この広大なキャッツキルパークの北部は山並みと渓谷さらに大小の湖が点在し20世紀初頭からNYで成功を納めた金持ち家族の避暑地と開拓された。客室が100を超える木造のホテルが数多く建てられ標高800メートルを登るケーブルカーや鉄道なども設備され避暑地として繁栄した歴史も残っている。だが、この地が繁栄したのは1850年頃から1960年後半までで、自動車の発達と高速道路の完成でNYからは日帰り圏内となり避暑地としての施設は必要がなくなり歴史的なホテルは次々と閉鎖された。今ではその面影は写真や絵のみでしか見られない。今も僅かに残っている当時のホテルは廃墟と化している。
 
 
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1824年に完成した部屋数が100を超えるキャッツキルマウンテンハウス。当時はNYからの金持ちや大統領までもが避暑にやって来た歴史をもつホテル
僅かに残る当時の建物は今では廃墟と化している
 
 

マウンテントップはニューヨークの片田舎

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キャッツキルパークは自然保護地区だけに環境を大きく変える開発や大型店、チエーン店、ファーストフードなどの出店はそれぞれの村で規制されているので見る事はない。一度この地区に足を踏み入れると、NYから僅か車で3時間の距離ではあるが、深い山間に潜む時代に残された村が点在している別世界である。19世紀の作家ワシントン・アービング (Washington Irving) のリップ・バン・ウインクル (Rip Van Winkle) はこの地に由来している。同じく19世紀の画家トーマス・コール (Thomas Cole) やフレデリック・チャーチ(Frederick Church)もこの地を好んで描いている。
電気、電話などのインフラストラクチャーは設備されているものの、都市ガス、水道設備は少なく、多くの家庭は井戸からの水と冬は薪を燃やしての生活が残っている。そんな自然の中での生活を求めNYからこの地に週末の憩いの場を求めやって来る人も多い。NYの片田舎とも言えるこの地に移り古い民家や農場を買い取り、設備を改めモダンな生活が出来る家に改造しているビジネスマンも多い。著名な作家やアーテイストもこの地を好んで住宅を構えている。またヨーロッパ人がこの地に多くセカンドハウスを構えているのも特色か。特にフランス料理のシェフが引退後にこの地を選んで住む人は多い。地形が豊かで新鮮な魚が川で取れ、鹿やウサギさらに新鮮な野菜、キノコなどが手に入ると言うのがこの地に魅了される理由。「マウンテントップ」とは、この地に住む人達が好んで使うプライドの高い呼び名。言うなれば下界とは違うという意味が含まれている。

 
 
アートと教育、持続可能(サスティナビリティー)な生活を求めるコミュニティー
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こんなNYの片田舎的な土地にロハスコミュニテイーを育てる団体がある。ピーターフィン氏はNYのグローバルPR会社、ルーダーフィン社 (Rouder・Finn Inc)の代表の一人。彼のお祖父さんがこの地に住んでいた60年代にピーターさんは週末や夏休みを過ごした記憶があるという。
そのピーターさんが90年代に観たマウンテントップは子供の時の光景とは一変し、廃れた活気のない村と化していた。お祖父さんから受け継いだ家を改装している時に「ここは自分が育った懐かしい土地」と気付き「何とか活気のある地域にしたい」と村の再生に力を注ぐ。

彼が最初に手がけたのが老朽化して売りに出されていた村の映画館。
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CMFの代表ピーターさんと農園を担当する伴さん
映画の好きなピーターさんはこの映画館を買い取り、ハリウッド映画と共にインデペンデントの小映画や外国映画を上映するモダンな映画館に改装し1998年にオープンさせた。最新映画、ましてはインデペンデント、外国映画などこの村では見ることが出来なかったマウンテントップの人たちにとって、新しい映画館は何よりもの娯楽であり、アートに触れる機会をもたらした。さらに翌年にはライブコンサートやパフォーマンスアートを催すドクトロウセンターフォザアート(Doctorow Center For The Arts) を隣接させ、アートを通じ村の復活を目指した。
 
 
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改装され新たになった映画館とドクトロウセンターフォザアート アートと教育それに食を提供するビレッジスクエアーも建てられた
 
 

町再生としての財団の誕生

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アートセンターの開設と共にピーターさんはアートと教育それに持続性をテーマとした農業を通じ、町の再生を目指す非営利財団、キャッツキル・マウンテン・ファンデーション (Catskill Mountain Foundation, CMF) を1998年に設立させる。その後ブックストアーやアートギャラリー、ナチュラルフードストアー、カフェ等が入ったハンタービレッジスクエアーをも新設。ハンターから数キロ北の村、シュガーメープルス (Sugar Maples) には地域に住む大人や子供たちを対象としたアート教育施設(Sugar Maple Center For Arts & Education) を開き、アートを誰もが経験し楽しめ学べる施設を作り上げる。
ピーターさんは活気を失ったこの地域をアートと教育サスティナビリティーをテーマに復活させたいと願っている。だが、近辺の村々の人口を合わせても5千人に程度、半径50キロ圏内でも1万人程度。施設をサポートするには十分でない数字。財団として州政府や郡からの補助金は受けているものの、運営は決して楽ではない。急速な経済の低迷で例年程の寄付は期待できない。財団の発刊物guideの広告収入も昨年に比べ落ちていると話す。ピーターさんはこれは20年30年の長期計画だと話す。いずれは、音楽のタングルウッド(Tanglewood, MA) やシェクスピアーフェステバルで知られるカナダのストラトフォード (Stratford, Canada) のような町にしたいと願っている。

 
 
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シュガーメープルスの村に建てられたセラミックアートセンター
古い教会はアートスタジオに
 
 

アートと自然農法とのつながり

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ピーターさんが力をいれているプロジェクトに農業がある。ピーターさんは何かを生み出すという意味で農業とアートに何かのつながりがあるのではないかと考えていた。幸いに、財団がシュガーメイプルス村で老朽化したリゾートホテル施設と土地を譲り受ける機会に見舞われ、その地に農園の開発を始める。
ピーターさんはこの農園を環境維持と持続可能性(サスティナビリティー)を求めた地域活性化の農地開発とした。荒れ果てた50年代のリゾート跡地を農園に仕上げるまでに3年の歳月を要したという。
特にキャッツキルは岩の多い土地柄、岩の除去に時間を要した。農園の片隅には今でも山のように積まれた岩や石が残っている。それでも2003年には4.5 エーカー(約1.8ヘクタール)の耕作面積とその後2棟のグリーンハウスが完成し、シュガーメイプルス・ナチュラル・アグリカルチャーファーム (Sugar Maples Natural Agriculture Farm) として農園は開かれた。
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CMF本部オフィス裏のアート
 
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農園は老朽化したリゾート施設の敷地内に開発された
 
 

秀明自然農法との出会い

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ピーターさんは農園を始めるにあたり有機栽培を目指したが、友人を通じて日本の岡田茂吉が提唱する秀明自然農法を紹介され、その導入を決めた。
2003年に秀明から伴憲司さん夫妻が農園に派遣されてキャッツキルでの秀明自然農法による耕作が始まった。
友人からキャッツキルの田舎で農園をしている日本人がいる、と聞いて早速出かけてみた。まだ土が凍る春の初めに友人と共に農園を訪れると、伴(憲司)さんが笑顔で出迎えてくれた。畑にはまだ何も植えられてはいないが、憲司さんと奥さんのめぐみさんは親切に自然農法の農園について説明をしてくれた。
伴さん
農園のマネージャー伴さんと奥さんのめぐみさん、
それに息子の和真くん。写真は伴さん提供
 
 
自然がすべての秀明自然農法
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農園のマネージャーである憲司さんの説明で、秀明自然農法とは「岡田茂吉氏(1882〜1955)が提唱した自然栽培法で、自然堆肥以外の些かの不純物も混ぜることなく、土を清浄化し、土自体の力を発揮させる農法と話してくれた。
農園 「自然がすべてを教えている」と岡田氏が述べているように、この農法の理念は自然尊重、自然順応であり、清浄な土、自家採取された種子、生産者の作物への愛情と大地への感謝を大きな特徴としています」簡単に言うと、自然栽培法はオーガニック栽培に比べ、より自然に近い栽培方法と言える。オーガニック(有機栽培)に使われる 農産、畜産廃棄物はここでは全く使われない。枯れ葉などの林産廃棄物を成熟させた肥料のみが使用される。
伴さんが手がける秀明自然農法による見事なナチュラル・アグリカルチャーファーム。
写真は伴さん提供
 
 
「土が本来持っている力を発揮させることが本農法の特長」と憲司さんは言っている。米国にも日本にも「オーガニック」の認定はあるが、「ナチュラル」という公式認定ないのが残念と憲司さん。

だが農園を開始して5年、今ではサラダに使われる葉野菜からズッキーニ、インゲン豆類、キュウリ、トマトまで15種にも及ぶ野菜を栽培している。高地で夏は短く気温がそれほど上がらないが、レタスやトマトは一夏で500ポンド以上の収穫があると憲司さんは言う。収穫された野菜は財団の店で販売される他に、近所のレストランやグリーンマーケットなどでも販売している。
価格的にはオーガニックに比べやや高めだが、一度その味を経験すると病み付きになるほどの美味しさが楽しめるとあって、品切れが耐えない。
採取した種
昨年採取したインゲン豆の種、自家採取は
自然農法では欠かせない        
 
 
秀明の自然農法は、「土を尊び、土を愛し、土を清浄にすることによって、土が本来持っている力を発揮させることが特長」という。「土が本来持っている生命を育む力を自然力とよび、自然力は、太陽・月・大地からそれぞれ放射される3つの力が融合することによって発生する」と説く。
秀明の自然農法は、「土を尊び、土を愛し、土を清浄にすることによって、土が本来持っている力を発揮させることが特長」という。「土が本来持っている生命を育む力を自然力とよび、自然力は、太陽・月・大地からそれぞれ放射される3つの力が融合することによって発生する」と説く。また憲司さんは、「実を大きく育てない」のも自然農法の考え方だと言う。実を大きく育てると「味が薄れる」。種の採取は毎年欠かせない仕事で、この農園で取れた種が「この土地の特色を一番良く知っている」という。
この考え方がエネルギーが湧く美味しい農作物生む秘密なのかもしれない。農園ではインターン制度を設け、一般の人々が参加して日本で生まれた自然農法を日本人の手によってこのキャッツキルの片田舎で指導している。
農園を囲むフェンスはダワシェルパ (Dawa Sherpa) さんが創ったもの。ダワさんはネパールの少数民族で元はヒマラヤ山脈のツアーガイドであったと言う。彼はこの自然農園で働いているが、スケッチもなしに周辺にある木を集めてフェンスを創っていくという。生まれながらのアーテイストなのだ
アートと教育を通じて新たなライフスタイルに触れる機会を提供し、村をサステイン(Sustain)する。自然農法を通じ農地と食をサステインする。自然は神が創ったアートである。破壊することなくいつまでもサステインさせたい。アートとエデュケーションとアグリカルチャー、新しいLOHASの要素として注目したい。
 
 
マウンテントップに住む子供たちを集めての自然農法の指導。
写真は伴さん提供
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