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ニューヨーク支局からは、
トレンド情報誌の先がけとなった「PRONTO」や「USフードジャーナル」の編集長を務め、現在は健康食品ビジネスコンサルタント会社を運営し、英文の日本の健康食品市場レポートを発刊しているポール山口がレポートします。
ニューヨーク支局  



CO2ゼロ、再生可能エタノール燃料
ヨーロッパはジーゼル車、日本はハイブリッド車、米国は日本製ハイブリッド車の圧勝かと思われたが、E85の出現はエタノール車への傾斜も・・・。ブラジル等南米勢力はエタノールが急成長。ガソリン高価格は、自動車業界も巻き込み新時代へ。

 高騰する石油価格、その時車社会は?


ガソリン価格が世界的に高騰している。日本に比べガソリンが安いとされていたこの米国でも急速な価格上昇は免れないでいる。同時多発テロ9.11の前年2000年にはNY周辺での1ガロンあたりのレギュラーガソリン価格は1.9ドル程度であった。6年後の今はそれが3.25ドル、70%の価格上昇だ。これは同時期の日本の上昇率の45%をはるかに超えている。
GM社から寄付されたシボレーのエタノール車に乗る、サウスカロライナ州の農務長官 (courtesy of South Carolina Department of Agriculture)
6年前には米国のガソリンは日本のそれに比べ1/2程度であったが、今その価格差は2/3程度までに縮小している。車での通勤率が75%という車社会である米国にとって、このガソリン価格の上昇は、まだ政治問題には至っていないものの、社会問題であることは間違いない。一日の食費を削ってもガソリンを買わなくてはならない人々の生活事情もテレビで放映されているほど、深刻な問題でもある。一方では、この高騰の中でも、ガソリンの消費がそれ程低下していないのも、米国民の車に頼る生活から抜け出せない事情も伺える。

 低迷する米自動車産業、日本車、軽自動車が善戦するが…

このガソリン高騰の影響を受けている産業は、ほかならぬ自動車産業である。それも、4リッター5リッターという大型SUVを生産していた3メイジャーがその影響を最大に受けている。破産寸前のGM、経営建て直しを迫られているフォード、メルセデスベンツの翼下ではあるが、クライスラーも元気がない。それに比べ、燃費の良い日本車、韓国車は売上げを伸ばしている。特に日本のハイブリッド車はデリバリーまで6ヶ月待ちという状況だ。ガソリン価格が上昇し、今後も価格上昇が予想される中、米国の自動車メージャーは日本車に勝る燃費のよい車を開発するか、輸入に頼らない供給が安定した低価格燃料の開発に挑むかの選択に迫られている。ゼネラルモータースはLive Green Go Yellow キャンペーン、フォード社はE-85 キャンペーンをそれぞれ推進しエタノール燃料の普及に力を入れている。

ガソリンに代る自動車燃料として砂糖キビやコーンからつくる、エタノール(エチルアルコールとも呼ばれる)が注目されている。国内で豊富に栽培されるコーンを背景に、低価格で何より供給が安定し、しかも廃棄ガスがゼロというエタノールは石油消費の約50%(Renewable Fuels Association) http://www.ethanolrfa.orgを輸入に頼る米国社会を救う再生可能燃料として注目を浴びている。エタノールの生産はガソリンなどのプロセスに比べ簡単で、車もエタノールへの変換、あるいはガソリンでもエタノールでもOKというフレシキブル車種の開発はすでに済んでいる。エタノールの供給が発達しているブラジルなどではガロンあたりで1ドル前後で市販され、多くの車がエタノールを燃料としている。ブラジルで生産されたエタノールは日本にも輸出されている程の生産量があるという。
GM社エタノールキャンペーン、Go Yellow, Say Yes to Yellow.

このような動きは以前からなかったわけではないが、このムーブメントを一般にも浸透させ、関心を高めようとしているのがナチュラル、オーガニックフードの大手スーパーWhole Foods Market が発表したThe Animal Compassion Foundationの創設だ。

 州主導で進むE85普及、自動車業界VS石油メージャーの構図が……

米国で市販が開始されているのは、E85と呼ばれる、エタノール85%、ガソリン15%というもの。(日本ではE3というエタノール3%が使用認可されている)E85を車に注入するには、それ専用のガスステーション(GS)が必要となる。E85のウエブサイトによると、全米には農産業の盛んなシカゴを中心とするミッドウエスト各州に約800のE85ステーションがあり、今年は400箇所程度の増加が見込まれているという。だが、全国に20万箇所あるガスステーションに比べその数は、まだわずか。

エタノールを広めるには、エタノールのGSが不可欠だ。エタノールを既存のGSで販売するのには、エタノール専用のタンクの設置が必要だ。その供給所を新設するには、約10万ドルの投資が必要。エタノール普及協会では、既存のGSにエタノールを扱えるタンクの設置補助金として3万ドルを提供しているが、普及が思うように進んでいない。石油企業と近い現在の米政府は、エタノール政策へは前向きに対処していない。
そこで、州単位でエタノールの普及が進めれているのが現状だ。コーンの産地であるアイオワ州では、新エタノールステーションの開設費用の半分を州政府が提供し、1ガロン販売するごとに25セントを援助している。(The New York Times)カンサスやイリノイ州でもエタノール普及に免税政策を行っている。をもちろん、エタノールを燃料とするフレシキブル燃料車が普及しないのでは、専用のGSも当然増えない。エタノールGSの広まりを遅らせているもう一つの理由に、石油大手がエタノールの普及に協力的でない事も最近のテレビや新聞で報告されている。GSの多くを運営する石油メージャーのGSではエタノールの供給を拒んでいるというニュースもある。
フォード社のE85キャンペーン広告

 低価格なフレックス車種、ハイブリッド車をしのげるか……

米自動車メーカーはエタノールの普及に積極的だ。現在、米国内には約5百万台のエタノール対応車が出回っている。これは全自動車数の約2%。全米自動車協会ではこれを2010年までに5%までに引き上げたいと考えている。自動車産業がエタノールに積極的なのは、エタノール車の燃費上昇が、政府が進めている環境政策と一致するためで、それにより免税援助が受けられるためだ。一方でエタノール普及に非協力な石油産業の肩を持ち、一方では自動車に免税をする米政府の矛盾した政策も見えてくる。

米自動車メージャーでエタノール対応車の種類はトラックなども含め10種ほど。米国車のハイブリッド2種に比べ、その数は多い。理由はそのプロダクションコストだ。既存の車種をエタノール対応車にするには、ほんの僅かなコストだが、ハイブリッドは4000ドル程度のコスト高となる事情もある。当然店頭価格も上がる事になる。何より、ハイブリッド車種開発では日本に遅れをとっているのも要因と言える。

 森を見る政策の必要性

自動車産業、中西部州のエタノール推進、さらに米国政府の環境、エネルギー政策。これらのパワーと、石油産業、中近東問題、OPECの価格変動など多くの要素が米国エタノールの将来にかかっている。経済や環境問題だけを考えれば、ガソリンに比べ価格が安く供給が安定、CO2排出のないエタノール燃料の方に軍配が上がる。
エタノール85%を示すE85のロゴマーク
経済的効果や環境的に良いだけでは、政策が進まない事は京都議定書(Kyoto Protocol) でも経験済みだ。政策を推進、成功させるにはネガイテブな面も飲み込み、木を見ずに森を見る大きな政策の推進力が必要だ。

日本の規制では、エタノールの配合が5%のE5が認可されている。ブラジルでは100パーセントエタノールE100も認可され、トヨタではブラジル輸出向けとして、エタノール100の車種を発売すると発表している。(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060613-00000195-kyodo-bus_all)米国ではE85がスタンダードとなっている。石油消費では米国に続き世界で2番目、しかも石油を100%近く輸入に頼っている日本ではエタノール比率を100までに高め、企業が競争してその開発に努める政策が必要だ。エタノールは砂糖キビやコーンでなくともその原料になる。日本に栽培される米や麦からもエタノール生産は可能だ。最近の研究では、枯れ草、稲わら、都市ごみ、建築廃材などのセルロース系廃棄物資源からもをエタノールの生産が可能だという。頭を抑える政策より、天井を取り除き自由に競争できる環境をつくる事が政府の仕事であり政策でありたい。





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