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ニューヨーク支局からは、
トレンド情報誌の先がけとなった「PRONTO」や「USフードジャーナル」の編集長を務め、現在は健康食品ビジネスコンサルタント会社を運営し、英文の日本の健康食品市場レポートを発刊しているポール山口がレポートします。
ニューヨーク支局  


 ここまで来ているアメリカの消費者意識
 
食材飼育にみるCSR (Corporate Social Responsibility)企業の社会的責任
英語にhumaneという単語がある。手元の英和辞典には「人間味のある」「人道にかなった」という訳が付いている。実際には「人間扱い」といった言葉のほうが、ぴったりとあてはまる感じである。最近の話題で言えば、多くの北朝鮮の国民が強いられている環境はヒユーメインな状況ではない、と言った時に使われる。

否定語は
inhumaneである、
この言葉が、
アメリカでは
最近特に
新聞やマスコミで
目につく。

この単語の発音や
スペルからも
想像できるように、

もともとは、
人間、humanが
語源の単語である。
だが今やこの言葉は人間だけに限られず他の生き物にも広く使われ始めている。動物も人間同様に「ヒューメイン」に接しよう、という考え方だ。毛皮はinhumaneの代表例のようにいわれる。ファッションのために、動物の命を絶つのはいかにも許しがたいというものだ。ネズミや他の動物を用いた医薬品や化粧品などの動物実験もこれらに含まれるものだろう。


 Animal Compassion(動物へのおもいやり)を提唱するホールフーズマーケット

だが、我々の食卓に上がった肉や魚を味わう時に、それらがどの様に捕獲、飼育されト殺されたかは、ほとんど考えることはない。だがステーキやハンバーガーなどの牛肉、トンカツなどの豚肉、さらに魚なども、かつては命があった生き物から得られたもの。もともと、これらの動物や魚は人間の食材となるために商業的に飼育されている。

そのためにコストパフォーマンスは飼育業者にとって欠かせない条件となり、効率よく飼育し市場に出すことが求められる。その結果、動物や魚は我々が想像を絶する様な環境の中で飼育されている。
このような飼育環境を改善し、動物や魚をhumaneに飼育し、しかもhumaneに食肉処理する傾向が食肉用の鶏、豚、牛、魚などにも広まっている。
Whole Foods Marketが創設したAnimal Compassion Foundation のロゴ(Whole Foods Market)

このような動きは以前からなかったわけではないが、このムーブメントを一般にも浸透させ、関心を高めようとしているのがナチュラル、オーガニックフードの大手スーパーWhole Foods Market が発表したThe Animal Compassion Foundationの創設だ。

同社はこの機関を通じ、広く食肉用動物の飼育環境を高め、より動物をhumaneに扱うと運動を始めている。数年先には、Animal Compassion(動物への思いやり)の規格を設け、オーガニックフードと同様に、承認機関を設ける事も検討しているという。

同社では近くhumaneに飼育され、食肉処理された食肉を他の一般の食肉と区別し、それらに「動物同情ラベル」Animal Compassionate Label を付け 同社の店頭で販売を開始するという。ホールフーズマーケット の創設者の一人であるJohn Mackey氏はThe Animal Compassion Foundation の創設について、"The quest for cheap food in our society has created an industrialized model of meat production in which animals are bred and raised in conditions focused on efficiency rather than on the basic needs of the animal," 「安い食材の需要が工業的な食肉生産体制を育て、その結果、動物の飼育環境は効率を優先し、動物たちの基本的なニーズを無視する飼育体制になってしまった」と語っている。

Whole Foods Marketでは今年6月から生きたロブスターの販売を止めている。理由は生きたロブスターをタンクの中で生かしておくのは、ロブスターのhumaneに反するがらだ、というのがその理由のようだ。


 価格は高いが味がいいと評判のFree Range(平場飼育、柵のない飼育)

養鶏施設でもhumaneムーブメントは広がっている。現状の安い鶏肉やタマゴを可能にしているのは、鶏を身動きもできないほどの狭いスペースに閉じ込め、ホルモンを含んだ肥料を大量に与え、短期間に最も効率の良い方法で大規模に飼育している結果である。このような飼育は決して鶏にとってhumaneな待遇ではない。

鶏を一日中、工場のような環境で飼育するのではなく、一日数時間でも屋外で自由に動き回れる環境で育てる方がより鶏にとってhumaneである。このような環境で飼育された鶏をFree range chicken(日本では平場飼育地鶏)と呼び市場にすでに出回っている。Murray's Chickenというのがこの種の大手で、同社ではCertify Humaneと言うラベルを商品に表示している。

価格的には他の鶏肉に比べ3〜4割高だが、味が良いとの評判で売れている。

また、囲いのない環境で育てれた鶏から取れたタマゴはCage Free Eggs(放牧)として販売され、これらにもCertify Humaneのラベルが貼られ、通常のタマゴより6割も高めだが、スーパーでの売上げは好調で、毎年25%の売上げ増加を記録していると、この業界機関であるUnited Egg Producersでは報告している。
囲いのない環境で飼育されるFree Range Chicken (Whole Foods Market)

 No More フォアグラ

シカゴをはじめ、幾つかの米国都市では、フランス料理の食材であるFoiegras の輸入や提供を法的に禁止している。理由はガチョウの口から強制的に餌を入れ、肝臓を肥大させ育てるのはhumaneな飼育ではない、というのがその理由。シカゴでは、フォアグラを提供すると500ドルの罰金が課せられる。

ファーストフードに使われる牛肉のハンバーガーパテ、その材料となる牛の飼育もまた他の動物同様、巨大な屋内で、生まれてから一度も体を回転させられないほど狭い囲いの中で、その一生を過ごす。その状況はEric Schlosserのベストセラー著書Fast Food Nationに克明に描かれている。

海洋に目を向ければ、フカひれ収穫の例はやはりhumaneに反する行為であろう。海洋で捕獲されたフカから、ヒレだけを切り落とし、生きたまま後は海に捨ててしまう。中国料理店でフカひれスープを注文する前に、そんな事を考えるだろうか。最近では鮭やエビの養殖も問題が表面化している。


 Certify Humaneラベル

このように、我々の食材となる動物や魚を人間的な立場で、より好ましい環境で飼育しようという運動は広まりつつある。だが、どこまでをhumane とみなし、どこからinhumaneとするかは判断が容易でない。

牛乳用の牛の場合、一日最低でも4時間は屋外で動き回れる環境が必要としているが、明らかな基準はない。国の規制もまだない。
豚の鼻にリングを付けるのは、許されるべきか。鶏一匹が占める面積は?、いけすタンクの面積と魚の数の比例は?。
未解決な問題は山ほどある。オーガニックが標準化されるまでには20年を費やしている。
人、動物、植物などが地球上で長く共存していくには、食材の飼育環境は避けて通れない問題。食には安全性と共に美味さ、長期供給Sustainability が求められる。オーガニック食品が定着した今、我々の食卓にオーガニック食品並みにCertify humaneの標準ラベルが付いた食材が並ぶまでには、まだ時間がかかる。

Murray’s ChickenのCertify Humaneのラベル

Compassionate(おもいやり) is CSR

人間が長く快適に地球上で生きていくには、自然とのハーモニーが不可欠。そしてハーモニーがSustainability を可能にする。いずれは食材料となる動物や魚でもhumaneな環境で飼育することが人間と彼らとのハーモニー、それがSustainability につながる。

ビジネスである以上、市場のNeedsや企業のProfit確保は欠かせない条件。だが目に見えない心の豊かさが尺度であるCompassion(おもいやり)に価値観を見出す豊かさも企業に求められる時代。法では規制されない企業の社会的な責任、いわゆるCorporate Social Responsibility (CSR)として「思いやり」が企業内に生まれている事は注目していい。







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