LOHAS EYES/ロハス・アイズ


「神内ファーム21」にみる北海道農業の未来

「プロミス」を創業し、1部上場会社に育て、70歳で幼少の頃からの「夢と志」である「北海道で農業を」という夢を実現するため、私財100億円を投じて、札幌から1時間半の浦臼町に600ヘクタールという広大な土地を取得し、起農した「神内ファーム21」の神内良一会長を訪ねることが出来た。

「神内ファーム21」のある北海道砂川駅についた。4月上旬でもまだ積雪が大地を白く覆い、時折強く雪が舞う。























今年は、それでもとても雪が少なく通常の1/3程度だという。

この「神内ファーム21」事業は今から10年前の平成9年に始まり、毎年、植物生産工場、ハウス、牛舎、研究所など様々な施設を整備し、日本一の農業ファームとなっている。
遠方に塾生用が住宅が立ち並ぶ

一昨年から新規就農者の教育と独立を支援する就農者の為の2階建て住宅15戸も建設し、実習と支援制度で家族で取り組める農業を目指し、月額35万円〜45万円の支援と住宅を用意し、厳しい教育をして起農を支援している。シュタイナー農学校のようでもあり、農業版「松下政経塾」といったところだろうか。


当時はメディアでも話題になり、一度は訪れてみたいと思っていたので、新技術の紹介を含めた今回の視察は、絶好の機会となった。
施設中央に全体を見渡せる「物見の塔」があり、タワーから見る施設の広さと壮大さ、立派さ、に言葉を失い、見つめ考えさせられる。

全体的になだらかな起伏があり、夏には7万本のラベンダーと6000本の果樹が、メイン道路には1000本の桜が植えられている。まだ木も充分成育していないので小振りだが北の遅い春には一斉に花が咲き、夏にはラベンダーの香りで息がつまるほどになるのだろう。今はただ、雪におおわれ白く光るのみである。

神内会長は、四国の小作農の三男に生まれ、苦労を重ねた立志伝中の人であり、穏和な中にも鋭い眼光とオーラは強烈で圧倒される。

会長の案内で物見の塔へ登り、施設の説明やここに至ったいろいろなストーリーを聞くうちに、ビジネスで培われた戦略的な構想と地域の農家と競合するような農作物は作らず、経済的な影響を与えないよう心がけていること、農業を天職と惚れ込み本気で励んでいることが実感できた。

やはり北海道での農業は気温と降り積もる雪との戦いであり「克冬制夏」なのだという。
お元気な神内良一氏

現在、ご自慢のフィルムハウス(ビニールハウス)では、バナナ、マンゴ、パイナップル、が生産されていて、今夏から市場にでてくる予定という。


台湾バナナをもいで試食してみたが、木に実ったまま完熟しているので、甘く、柔らかく市販のバナナとは全く異質のものであった。


パイナップルは糖度19度という甘さで特有の酸っぱさもあり、濃密なものであった。やはり気温の関係で成育が遅く、木に実っている時間が長いのでそれだけ濃密になるのではないかと言うことであった。


マンゴーは2〜3ヶ月収穫時期がずれるので、
今回試食することは出来なかったが、立派に結実しており楽しみだ。

←たわわに実るマンゴー

フィルムハウスと呼ばれる巨大な施設があるが、太い鉄骨づくりの強固なもので、ビニールは2重3重に張られており、空気の復層を作り温度の維持と雪の重量に耐える工夫を凝らしていた。

ボイラー暖房のほか、太陽光と地中熱を利用したり、夏場は「氷蓄熱」を利用し、温度管理に工夫している。1棟1億円程度の工費が掛かるとのことであった。今後100棟の計画があるという。

南国のフルーツ達はこうした技術と栽培の人たちに手厚く環境を守られ、幸せにすくすく育っているのである。

フィルムハウスの複雑な構造

「克冬制夏」という大きな命題に取り組んでいるのだが、農業として持続可能性は有るのか、市場価格に対し競争力があるのか、環境への負荷など、まだ実験段階であり結論が出るのはまだ先になるのだろう。

ビニールチューブによる暖給気

神内良一氏の夢への挑戦は、自然への挑戦でもあり、寒冷地農業への挑戦であり、先端技術への挑戦、でもある。

しかし、力づくでは解決しない問題も数多くあるはずで、若い起農家を教育し実習させているのは、幾つかの挑戦がこうした若い力と知恵が将来、解決への道筋を見つけ出すことを理解しているからなのだろう。

施設を巡回し、視察したが、そこで働く彼らの生き生きとした表情と礼儀正しい立ち振る舞いは印象に残っている。









ジオビオス

だがなんと言っても「プラントファクトリー」の装置は見応えのあるものだった。

プラントファクトリーの外観

筆者の私も「筑波科学万博」政府館で1万個の実を付けた巨大なトマトを水氣耕栽培で経験したし、5〜6階建て立体駐車場のような回転式で人工光による、葉もの栽培を実験したので経験はある。フロリダ州のディズニーワールドで農と食テーマの「The Land」も見学したことがあり、農業の未来像には興味を抱いていた。

「プラントファクトリー」はよりコンパクトに実現可能なカタチで施設化されていた。天然光や人工照明で光合成を、温湿度、CO2濃度、換気をコンピューター制御で管理している。

成育管理も栽培の台座が機械式に移動し、成育にあわせ移動循環する仕組みで全く人手はかからない。まさにコンピューター農業を実現している。

ハイポニカ養液の装置
冬の間に建物地下に1000トンの氷を貯蔵し、夏場には冷房に使い北海道とはいえ、30℃にもなる夏場対策や野菜の冷蔵に利用している。
「克冬制夏」はハイテク、ローテクを総動員して実現され、北海道で南国の果実を栽培するという夢が目の前で現実のものとなっている。

今まで進物用の果物の王様といえばメロンだったが、それを抜く人気が今やマンゴーだ。500円程度で買えるのもあれば、1個2万円近い高級品もある。プリン、ヨーグルトにカクテルなどマンゴー味の加工品も続々登場し、ブームとなっている。
あの濃厚な味に目覚めた若い女性たちに受けているのだ。中年男性の間でも「二日酔いにも効く」というので人気が出始めた。北海道の神内ファーム産となれば話題になるだろう。
天然光・人工光栽培室

1985年の「筑波科学万博」で1万個の実を付けた巨大なトマトは、確か設備費から換算すると、1個1万円位に相当しているはずである。まだ水耕栽培は農業として認められない時代でもあった。このような博覧会での壮大な実験展示が今、民間で実用化実験が定着して行われているのは、1個1万円のトマトへの投資は決して高くはなかったのではないかと納得したりしている。

やはり北海道らしい雄大な農業は露地栽培で大規模にやるべきなのだろう。

LOHAS アカデミーで海外研修の地であるコロラド州ボールダーは、10月末には雪が降り始め、3月末にも大雪に襲われた経験があり山々にかこまれていて北海道のこの地によく似ている。

←ボールダー郊外の山羊牧場

↓ナチュラルミートのコールマン

ボールダーは2000mの高地であり条件は厳しいが、郊外は中西部屈指の農産地である。特にオーガニック農産、オーガニック畜産では全米1といっても良い圃場と市場を持っている。
コロラド周辺でオーガニック農業があたりまえに出来るのは、半年間雪に覆われていることで、害虫駆除や土壌の豊かさにつながっているのだろう。

マイナス(寒冷)をプラスに変える農業として「温室効果ガスの削減」と「土壌を守る持続可能な農業」すなわち、地球環境に負荷の少ない有機農業の振興はこれからの農業の基本となるだろう。

今回「神内ファーム21」を見て感じたことは、肉牛の養育も大規模に行われているし、めん羊も飼育しているので、彼らの有機物をリサイクルして有機肥料を生産し、大規模な農業と畜産の循環型の複合農業の展開が可能であり、そこに北海道農業の未来と可能性があるのではないかと感じた。

山口こういち





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